マクドナルドがお財布ケータイを利用した新クーポンサービスを開始

 日本マクドナルドホールディングスとThe JVは、携帯電話を利用したマクドナルドの新会員サービス「かざすクーポン」を発表した。まずは九州地域で5月20日より提供される。

 かざすクーポンは、おサイフケータイの機能を活用したクーポンサービス。従来より提供しているオンラインクーポンをアプリ化したもので、購入したい商品とクーポンの使用枚数をあらかじめ決めて、レジ前のリーダーに携帯電話をかざすことで注文できる。支払い方法はiDか現金で、注文後にどちらで支払うか口頭で店員に伝える。また、ドリンクの種類なども口頭で店員に伝える。

マクドナルド、おサイフケータイを活用した新クーポンサービス -ケータイwatch

今、生活者にいちばん使われているクーポンはマクドナルドのクーポンかもしれない。hotpepperやぐるなびといった元祖クーポンマガジンが強いとはいえ、店舗(ブランド)単独で見れば、マクドナルドを超えるものはないだろう。ケータイサイトの登録ユーザーは優に1000万人を超え、小学生からサラリーマンまで幅広い層の生活者が、毎日大量のクーポンを利用してマクドナルドの商品を消費している。明確な根拠(データ)はないが、周りの話やマクドナルド店舗の様子を観察するに、まあそう外れてはいないと思う。

そのマクドナルドがついに、おサイフケータイを利用したクーポンサービスを始める。わざわざケータイブラウザを起動する必要もなく、R/Wにかざすだけで利用可能になり、ユーザーにとってはますます便利で使いやすいクーポンサービスになったと言える。
また、何よりもマクドナルド側にとっては、このサービスが大きな進歩の鍵となる。今までの個人情報(ケータイサイトの登録情報)に加え、購買履歴の紐付けが可能となる。これほどリアルで貴重なマーケティング・データベースはないだろう。

まあ、マーケティングに従事するモノとして、「お財布ケータイ(電子マネー)」といえば「個人情報×購買履歴」という発想がでてくるのは当然のことだし、さして新しいことではない。今回のマクドナルドの件もそうだが、技術も大分進歩して、「理想」の実現に着々と近づいてきていると言えよう。


話はそれるが、今後電子マネー競争で勝ち残っていくのは、7&iホールディングスのnanacoイオングループWAONをはじめ、流通系電子マネーだと思う。
大きな理由は、以下の3つ。

  • ポイント還元・クーポンをドライバーに顧客獲得・囲い込みが可能。
  • 生活に密着した商品の購買の場をおさえており、食品から衣料品まで生活者の消費を幅広くカバーできるため、よりリアルな生活・購買実態を把握することが可能。
  • グループ内であればPOSもほぼ全ての店舗が共通のものを使っているので、ユーザー個々人の購買履歴との店舗状況の紐付けシステムの構築が容易にできる

発行枚数でいうなら、まだEdySuicaの方が優勢かもしれない。しかし、トランザクション数を見ると、流通系電子マネー(というよりnanaco)の圧勝である。結局、提携先は多いがポイント(マイル)加算率がよくないEdyや、交通ICカードの領域を出ないSuicaは、「個客(顧客)の購買情報の蓄積」の側面で流通系電子マネーで戦おうとしても苦しい・・・ということである。
ただし、Suicaに関しては他の電子マネーICカード)では取れない「行動・移動履歴」を取ることが可能という強みがあり、また近年エキナカを中心に消費の場の構築を始めていることから、今後の取り組み・スピードによっては巻き返しが可能ではないかと思われる。


ここで、マクドナルドの話に戻したい。
なぜケータイ・クーポンでマクドナルドが強いのか。それは、上記流通系電子マネーの強みと同じである。ぐるなびホットペッパーでは、正確な利用率や生活者の嗜好・消費傾向を収集・分析することは難しい。掲載店舗とのPOS、顧客情報DBの共有なんてもっての他。となると、単体で広大なネットワークを持つマクドナルドのような大型チェーンが持つ顧客の個人情報×購買情報の質・量は、圧倒的に強くなるのである。
まあ、領域が狭いといったらそれまでだが、企業のマーケティング・ツールとしてはこの上ないDBであることには変わりないし、そのDBを利用して新しい広告媒体としてクーポン事業を発展させることだってできるわけで、可能性は無限大だ。


電子マネー元年から2年。おサイフケータイが始まって4年。
技術とライフスタイルのレベルがようやっと一致しはじめた今日、これからどう発展していくのかが楽しみである。