ニコ動からMADが消える ―そのとき、テレビ・広告業界が変わる!?

ニワンゴが、ニコニコ動画において著作権を侵害している放送番組の動画をすべて削除すると、キー局6社に申し入れたとか
具体的には、下記2条項を申し入れたとのこと。

1. ニコニコ動画内における既存の著作権侵害放送番組動画はすべて削除する
2. 新規投稿動画の監視を行い著作権侵害放送番組動画については直ちに削除する

ニコニコ動画、著作権侵害のテレビ番組動画をすべて削除へ--放送局に申し入れ −CNET

ひろゆき氏は以前から「著作権を侵害しているコンテンツはいらない」と明言している。たしかに彼が下記のインタビューでの答えには一貫性と説得力があるし、本来ならば、コピーライト付きコンテンツに頼らずともユーザーが創発的に面白いものを創造していく世界が望ましい、というのも当然理解できる。

YouTubeに載ってるとき(SMILE VIDEOサービス開始前)は,たぶんそれで人気なんだろうなと思っていたんですが,いまは本当に減らしたいんですよね。テレビコンテンツを見たいのであればテレビを見ればいいし,Gyaoを見ればいいと思うんですよ。それなら別に僕らがやる必要はないわけで。
 僕らがやろうとしてるのは,ユーザーが作ったものをいじくって,ユーザーが楽しいと思える世界です。テレビってたぶん,出したら100万人が面白いと思えるものを作る場所ですけど,ニコ動って1万人にとって面白いものを100個作れば100万人じゃないか,っていう感覚なんですよ。
 っていうところで,ユーザー同士が他人の作品をいじり合うのも,著作権法的には基本的にアウトなんですけど,ユーザー同士ならアリにすべきだと僕は思っていて,そっちの方向に行きたいっていう。

「2ちゃんねる」と「ニコニコ動画」のひろゆき氏が語る,ゲーム・コミュニティ・文化 −4Gamer.net

しかし、今回の申入書が正式に発動され、コピーライト付きのコンテンツ及び所謂「MAD」と呼ばれる現在のニコ動メインコンテンツのひとつが全て削除されたとき、ニコ動には何が残るのだろうか?
VOCALOID関連はまず大丈夫だとして、コピーライト付き楽曲を利用している「歌ってみた」「弾いてみた」「踊ってみた」関連のコンテンツはどうなるのだろうか?ランティス組曲*1のようなネット発のスーパー素人コンテンツをマスに落とすような新しい仕組みが生まれにくくなってしまうのではないだろうか?


……とか何とか考えたものの、おそらくニコ動はもう次のフェーズに移行している、ってだけの話なんだろうなw

上記のような危惧は現在のニコ動ユーザーの中では当然憂慮される問題ではあるが、RC2からSP1にヴァージョンアップし、動画作成ツールや初心者向け講座の拡充などを積極的に行っているのを見れば、ニワンゴにとっては「そんなの関係ねぇ」のかもしれない。
つまり、今までのコピーライト付きコンテンツやMADなどを中心に参加・消費して楽しむサービスから、ユーザーがゼロからコンテンツを創作しマッシュアップを重ねていく「真のスーパー素人」のためのサービスに移行しているのだ。ニコ動が「新しい文化の創造」に重きを置いているのであれば、至極自然な、必然的な流れであろう。


「でも、ネットでコピーライト付きコンテンツが見れないなんて不便すぐる…!」というユーザーの叫びがあるのも当然だし、これを無視していいというわけではない。ただ、これに関してはニコ動がやるのではなくて、放送業界及びコンテンツ業界がやればいいだけの話。実際、日テレがニコ動ライクなサービスを実験し始めている。

HDDレコーダーやら動画ストリーミング配信やらがこれだけ普及して、ユーザーが好きなコンテンツの好きな部分を「点」で消費するのが当たり前になっている状況で、「線」でのコンテンツ消費を強制していること自体が不自然なのだ。リアルタイムのレア性を追求し、広告枠の価値を最大化して売りさばくビジネスモデルにぶらさがるより、さっさと過去のコンテンツも全部ネット上にアーカイブして、作品単位で課金するなり、月額製で利用料を徴収するなりした方が賢いのではないだろうか。


……とか言うと、スポット命な某社にぶっ潰されそうだがw、こういった側面から考えて、やはり広告業界も柔軟な対応、変化を求められているのだと痛感した次第である。

*1:まあ、CDの出来に関してはおいといてw