何故キットカットは「合格祈願菓子」の代表格になったのか?


今年もこの季節がやってきた。合格祈願菓子の発売ラッシュ!

http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/special/20080110/1006022/?P=1


合格祈願菓子の原点はネスレ キットカットだとされる。
その概念を定着させたのは、J.W.トンプソンのキャンペーンだ。

「Have a break, have a KitKat!(キットカットで一瞬の解放を!)」というコンセプトから、「キットカットなら、きっと勝つ!」にブレイクダウンした「受験生応援キャンペーン」。

受験生が泊まるホテルで、チェックイン時にキットカットをプレゼントしたり、webで「花とアリス」のショートムービーを公開したり、山手線の車体および駅ビル外壁をジャックして満開の桜を咲かせたり…話題性に富んだメディア展開を行いながらも、とにかく「キットカットは、受験生を応援します」というメッセージを徹底的に伝え続けた結果、ブランディングと売り上げ向上に成功したキャンペーン。

詳しくは「チーム・キットカットのきっと勝つマーケティング」を是非読んでいただきたい。


さて、この時期になると、あの満開の桜のポスター、山手線にかかれたキットカットのロゴ、キットカットを食べながら単語帳に向かう学生を頻繁に目にするのだが、毎回「ああ、やっぱり良いキャンペーンだなぁ…」と思う。
私自身、志望校の校門で担当教員からキットカット片手に喝を入れてもらい、無事合格!という経験をしているからかもしれない*1が、それにしたって、良いものは良い。


「広告」の価値を考えたとき、もっとも大きなファクターは「ひとの心を動かすことができる」ことだと思う。
「モノを売ってナンボ」の前に、「感動させてナンボ」だろうと。


キットカットのキャンペーンは、この部分が徹底されているのだ。
不安で仕方がない受験生にそっと寄り添い、「大丈夫、きっと勝つよ!」と励ましのメッセージを送り続ける。
そりゃ、心に響かないわけがない。ブランドに愛着を持たないわけがない。
消費者とブランドの間に、幸せなエンゲージメントが結ばれているのだ。


同じ理由で好きな広告をもうひとつ。

「PASSION HACK 情熱でマーケティングに差をつけろ!」さんでも、「心ごころ」さんでも紹介されていた、リクナビのCM「山田悠子の就職活動」シリーズ。



これを見て励まされた就活生は、少なくないはず。



やれTVCM崩壊だ、やれCGMだ、やれインタラクティブだのなんだの、広告の存在意義時代が問われる時代。
メディアや業界の仕組みが変わろうと、本質は結局変わらないのだと思う。

どれだけひとのことを考え抜いて、メッセージを伝えるか。
どれだけ幸せを提供できるか。


これが、良い広告を作る、まず第一歩なのだろう。

*1:「朝の試験前と、昼休みに食うから!」と無理やり2個奪ったのは、若気の至りだと思いたい。